(29)心あてに 折らばや折らむ 初霜の

百人一首29番歌

心あてに
折らばや折らむ
初霜の
置きまどわせる
白菊の花


古今集・秋下277

by 凡河内躬恒
 (おおしこうちのみつね)
生没年未詳
古今集」の選者4人の中の一人
36歌仙の一人



あてずっぽうに、もし折るならば折ってみようか。
初霜が降りた中、見分けもつかないほど白い白菊の花を。

心あてに=あてずっぽうに




凡河内躬恒は、宇多天皇醍醐天皇に仕えました。

紀貫之と甲乙つけがたい歌の名手とされています。



偶々・・「大和物語」を読み始めてすぐ、心にとまる歌がありました。

「大和物語」第5段

わびぬれば
今はと ものを 思へども
心に似ぬは 涙なりけり

by 大輔

今は泣いちゃダメなんだけど涙がでてしまう、という歌

大輔は女性です。

大輔(たいふ)=
醍醐天皇の皇太子・保明親王の乳母の娘で、保明親王のお子さんを宿したようです。
保明(やすあきら)親王が21歳で急逝したことを悲しんで詠んだ歌です。
皇太子が生きていたら大輔の人生も大きく違っていたことでしょうね。



この歌が少し変化して、凡河内躬恒の歌として「新勅撰集」に載ってます。


「新勅撰集」恋4

わびぬれば
今はと ものを 思へども
心しらぬは 涙なりけり

by 凡河内躬恒