(70)寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば

百人一首70番歌


寂しさに
宿を立ち出でて
眺むれば
いづこも同じ
秋の夕暮


「後拾遺集」秋上333


by 良暹法師(りょうぜんほうし)
生年不詳~1064年頃?



「宿」は旅館ではなく自宅、庵のことです。

良暹法師は、大原や雲林院にも住んでいたようです。

俗世を避けて山中での孤独な寂しさがしみじみと伝わってきます。

素直な表現が人々の心に受け入れられ、「秋の夕暮」という表現は、良暹法師のあとに多く詠まれるようになりました。

新古今和歌集」には、『秋の夕暮』が3首並んで配列され『三夕の歌』といわれます。
新古今集361 寂蓮
 新古今集362 西行
 新古今集363 定家)

良暹法師は、「詞花集」「千載集」にも歌があり、歌人の先駆者として尊崇されていたようです。