(51)かくとだに えやはいぶきの さしも草・・その①

百人一首51番歌

かくとだに
えやは伊吹の
さしも草
さしも知らじな
燃ゆる思ひを

「後拾遺集」巻1恋612
詞書「女に初めてつかわしける」

by 藤原実方
生年不詳~999(40歳位)




「こんなに貴方を思っています」とさえ言えないのですから、ましてや伊吹山ヨモギ(もぐさ)の火のように燃える私の思いを貴方はご存じないでしょう。


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歌を贈った相手は不明ですが、清少納言ともいわれます。

難しい歌なので、この歌をおくった相手はきっと才女でしょうと。

家集「実方朝臣集」には、清少納言と恋愛関係にあったことを示す贈答歌があるそうです。

清少納言枕草子」には実方が幾度か登場します。

枕草子」最終章内の第302段に、伊吹山のさしも草を歌に詠んでいます。

「まことにや、やがては下る」と言ひたる人に、思ひだにかからぬ山のさせもぐさ 誰か伊吹のさとは告げしぞ

実方の事とは書いてありませんが、実方説があります。(清少納言が実方に思いを寄せていた説)

実方には妻がいて、遠い陸奥に赴任した時には妻が同行しました。

陸奥に赴任した実方は、4年後に陸奥で亡くなってしまいました。


51番歌は、
複雑で凝った技法を使った難しい歌です。

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かく=このように
だに=~さえ、~すら

かくとだに=
こんなに(私が思っている)とさえ

えやはいふ=とても言うことなどできない

「いふ(言う)」と「伊吹(いぶき)」を掛けています

いぶきのさしも草=
伊吹山が産地のヨモギ

さしも草=
ヨモギ=お灸のもぐさ=
熱い→→もゆる思い

さしも=そのように

思ひの「ひ」=「火」の掛詞



歌枕の「伊吹」は、下野(しもつけ、栃木)と、近江(滋賀)の2説があります。

作者・藤原実方

*近江の伊吹山を眺めつつ陸奥へ去って行ったから「近江」説

陸奥へ向かう道中にある「下野」説


~~つづく~~