(47)八重葎 しげれる宿の さびしきに

百人一首47番歌

八重葎(むぐら)
しげれる宿の
さびしきに
人こそ見えね
秋は来にけり


拾遺集」秋140

by 恵慶法師(えぎょうほうし)
生没年不詳、出自不詳



葎が幾重にもなって繁っている淋しい家に人は訪ねて来ないけれど、季節が移り秋は訪れてきたのですね。



詞書
「河原院にて、荒れたる宿に秋来るといふ心を人々よみ侍(はべ)りけるに」

河原院=
左大臣源融(みなもとのとおる、14番歌作者)の邸宅。
融の没後は荒れ果てていたそうですが、融の子孫・安法法師が住み、歌会が開かれたりしました。

宮中、内裏での公的な歌合とは違い、邸宅で行われる私的な歌会では、自由な新しい歌が詠まれました。

河原院で集まり歌を詠んだ人々を河原院歌壇といいます。

恵慶法師の詳細は不明ですが、河原院歌壇の一人で、平兼盛(40番歌)、清原元輔(42番歌)、大中臣能宣(49番歌)らと交流があったそうです。


源氏物語のモデルともいわれる源融の邸宅が荒れ果てて、河原院と呼ばれている、時代の移り変わりを感じます。