(46)由良の門を 渡る舟人 梶を絶え

百人一首46番歌

由良の門(と)を
渡る舟人
梶を絶え
行方も知らぬ
恋の道かな


新古今集」恋1-1071

by 曽祢好忠(そねのよしただ)
生没年不詳(または、923~1003)
曽丹(そたん、丹後の判官だったから)



由良の瀬戸を渡る船人が梶をなくして、あてどなく漂っていくように、どうなるかわからない私の恋路よ



歌枕「由良」=
紀伊和歌山県)または
丹後(京都)または
淡路島(兵庫県

と=水の出入り口、狭い水路



曽祢好忠は、出自不詳、生没年不詳です。
寛和年間(985~987)を中心に新風の和歌を詠みました。
拾遺集に9首、詞花集に17首など、勅撰集に沢山の歌が選ばれています。



960年(天徳4年)曽祢好忠は、
家集「曽丹集(=好忠集)」の中に『百ちの歌』を詠んだので、「百首集」の創始者といわれます。

同時期、48番歌の源重之が、東宮時代の冷泉天皇に奉った「風をいたみ」の歌が「百首歌」に含まれる一首のため、源重之が最初ともいわれます。


当時としては和歌の新しい形式、1人、又は複数人で百首詠んだ歌集を「百首集」「百首歌」などと言います。

曽祢好忠は、さらに1年を360首に歌いこめた「毎月集」を作りました。



「好忠集」から夏の歌

曇りなき
青海(あおみ)の原を
とぶ鳥の
影さへしるく
照れる夏かな

しるく=はっきりと


夏の青空を映す海に、空飛ぶ鳥の影が映って見える、真夏の風景が浮かびます。

1000年以上たった今にも通じる感覚の歌に思えます。