(33)久方の光のどけき春の日に

百人一首33番歌

久方の
光のどけき
春の日に
しづ心なく
花の散るらむ

古今集・春下84

久方の=天空に関する語の枕詞
しづ心=静かで落ち着いた心


のどかな春の陽がさす日に
どうしてこうも心あわただしく桜は散っているのだろう


百人一首の中で
6つある桜の歌のひとつです。


by 紀友則
 生没年未詳
宇多・醍醐天皇に仕えて大内記(だいないき)を務めた。
紀貫之の従兄弟
古今集」撰者のひとり




作者の紀友則は、紀貫之の従兄弟で、
平安時代 第59代・宇多天皇
第60代・醍醐天皇に仕えました。

宇多天皇は、皇子の頃、
(父の光孝天皇の時)政治的配慮で臣籍に下されたのですが、3年後に再び皇籍に戻って即位しました。
皇籍復帰した 唯一の天皇です。)

宇多天皇が臣籍のときに生まれた息子も、2歳の時、父とともに皇籍復帰し、12歳で即位し醍醐天皇となりました。
皇籍ではない身分として生まれた 唯一の天皇です。)


宇多天皇の治世では
仁和寺を建立したり
菅原道真を抜擢登用し
遣唐使を廃止したり
文化面では多くの歌人が輩出されました。

父の治世を受け継いだ醍醐天皇は、菅原道真太宰府に左遷されたときの天皇です。
左遷された菅原道真の怨霊で様々な悲劇が起きたと言われてるのは 有名です。

また、835年に亡くなった空海に、921年に「弘法大師」の諡号(しごう、おくりな)を追贈したのも醍醐天皇です。



作者の紀友則は、
古今集」の選者の一人ですが、
古今集」を奏上する前に亡くなったそうです。